読書メモ

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ゲーム理論 新版 (岡田章) 第1章 ゲーム理論とは何か

ゲーム理論 新版

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1 ゲーム的状況

  • 複数の意思決定主体 (もしくは行動主体) が、それぞれの目的を達成するために行う意思決定 (もしくは行動) が、相互に依存しあう状況を、ゲーム的状況という。
  • こういったゲーム的状況を数理的にモデル化したものを、ゲームという。
  • こういったゲーム的状況を数理的で厳密な方法論を用いて分析する理論を、ゲーム理論という。

2 ゲームの基礎概念

  • ゲームにおいて自律的な意思決定/行動ができる最小単位を プレイヤー (player) という。
  • 各 player の目的が完全に相反するゲームをゼロ和ゲーム (zero-sum game) といい、そうでないゲームを非ゼロ和ゲーム (non-zero-sum game) という。
  • 複数の player が協力を目的として形成する集団を提携 (coalition) という。
  • ゲームをプレイするために必要な行動の計画を戦略 (strategy) という。
  • player は、複数の可能なゲームの結果に関して選好順序 (preference order) を持つ。
  • 選好順序を数値化したものを効用 (utility) または利得 (payoff) という。 player は自分の utility / payoff を最大化するように strategy を決定する。
  • ゲームに参加する player の集合、 player の目的、選択可能な行動集合、さらに、ゲームのプレイの進行を定める様々な規定を、総称してゲームのルール (rule) という。
  • 全ての player がゲームのルールを完全に知っていることを相互に認識し合っているゲームを、情報完備ゲーム (game with complete information) という。 (チェスや将棋、野球などのスポーツはその典型)
  • このとき、ゲームのルールは player の共有知識 (common knowledge) という。
  • ルールが player の間で共有知識でないゲームを情報不完備ゲーム (game with incomplete information) という。
  • 一定のルールの下ですべての player が採用する strategy とその結果 (outcome) を、ゲームの解 (solution) という。ルールと解を区別することが重要。
  • ゲームの player が、rule を理解した上で、明確な自分の目的を持ち、利得 (payoff) を最大化するように行動する場合、その player は合理的 (rational) であるという。
  • この合理性が様々な形で限定されている場合、 その player は限定合理的 (bounded rational) であるという。

3 非協力ゲームの理論と協力ゲームの理論

  • 非協力ゲームと協力ゲームの違いは、ゲーム的状況の違いではなく、ゲーム的状況を分析するための方法論の違いである。(協力・交渉・競争といった現象を非協力ゲーム的に研究することもできるし、協力ゲーム的に研究することもできる。)
  • 非協力ゲームは、プレイヤー間の協力を前提としないで、競争や協力などの様々な行動を個々のプレイヤーの意思決定のレベルで分析する。
  • 協力ゲームは、プレイヤー間の協力を前提とし、プレイヤーの提携行動や協力の成果を分析する。

4 ゲーム理論の歴史

  • 1944: フォン・ノイマンとモルゲンシュテルンが大著『ゲームの理論と経済行動』を出版。ゲーム理論の様々な基礎概念や研究方法が提示された。
  • 1950年代前半: ナッシュとキューンによって、非協力ゲーム理論の基礎が確立した。
  • 1960年代後半: ハーサニーとゼルテンによって、非協力ゲーム理論が展開された。ハーサニーは情報不完備ゲームのモデルを定式化し、ゲームの均衡としてベイジアン均衡点を導入した。これらの研究を基礎として、1970年代に情報・インセンティブ・組織の経済学やIOなどの分野で、非対称情報と戦略的行動の研究が生まれた。ゼルテンは部分ゲーム完全均衡点、完全均衡点の概念を提示した。
  • 1970年代: メイナード・スミス=プライスらによって進化ゲーム理論が生まれた。
  • 1990年代: 行動ゲーム理論