ゲーム理論 新版 (岡田章) 第2章 戦略形ゲーム ( 3 )
- 作者: 岡田章
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2011/12/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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3. 混合戦略と期待利得
純戦略と混合戦略
- 硬貨合わせゲーム (matching pennies)
- プレイヤー1とプレイヤー2が100円硬貨でゲームをする。二人がそれぞれ表か裏かを選択し、両者が同じ面を選択したらプレイヤー2の勝ち。両者が別の面を選択したらプレイヤー1の勝ち。
- このゲームには均衡点がない。
- ここで、プレイヤーが単にどちらかの面を選択するのではなく、確率分布に従って表か裏かを選択する様に行動する戦略を 混合戦略 (mixed strategy) という。
- これに対して、これまでのように確定的にある行動を選択する戦略を、純戦略 (pure strategy) という。
混合戦略における戦略形 n 人ゲームの定義
- 戦略形ゲームにおいてプレイヤーが混合戦略を用いる時、プレイヤーが利得の期待値の最大化を行うという仮定を、期待効用仮説 (expected utility hypothesis) という。
- 戦略形 人ゲーム の 混合拡大 (mixed extension) とは、次の要素の組で定義される。
- はプレイヤーの集合。
- は 上の確率分布の全体がある。 上の確率分布 をプレイヤー の混合戦略という。
- は直積集合 上の実数値関数で、次のように定義される。
-
- は混合戦略 が純戦略 に付与する確率を表す。
- をプレイヤー の 期待利得関数 (expected payoff function) という。
- 期待利得関数 は直積集合 上で連続で各変数 に関して線形な関数である。
-
- 最適適応、均衡点、戦略の支配、パレート最適性の概念は、混合戦略の場合でも期待利得関数を用いて純戦略の場合と全く同様に定義できる。
実現可能集合の定義
- プレイヤーが実現可能な期待利得のベクトルの集合を 実現可能集合 (feasible set) という。
- 定義2.5 戦略形ゲーム の混合戦略による 実現可能集合 は、 で定義される。
- 実現可能集合 は、期待利得関数 の連続性より 次元ユークリッド空間の有界な閉集合 (コンパクト集合) であることがわかる。
- 関数の連続性 https://mathtrain.jp/continue
- 有界な閉集合 (= コンパクト集合) とは?→ 『集合・位相入門 (松坂和夫)』第5章 連結性とコンパクト性 (P. 195)
- 定義 2.6 戦略形ゲームGにおける期待利得ベクトル が実現可能集合 に関してパレート最適であるとは、すべてのプレイヤー に対して、 となる期待利得ベクトル が存在しないことである。
実現可能集合の例
「囚人のジレンマ」の実現可能集合
利得行列
1 \ 2 | 黙秘 | 自白 |
---|---|---|
黙秘 | 5, 5 | -4, 6 |
自白 | 6, -4 | -3, -3 |
グラフ
- 上記の場合は、実現可能集合は凸集合となっているが、一般に混合戦略による実現可能集合が凸集合となるわけではない。
- 凸集合: ユークリッド空間における物体が凸 (convex) であるとは、その物体に含まれる任意の二点に対し、それら二点を結ぶ線分上の任意の点がまたその物体に含まれることを言う。 (wikipedia)
「男女の争い」の実現可能集合
利得行列
1 \ 2 | ボクシング | バレエ |
---|---|---|
ボクシング | 2, 1 | -1, -1 |
バレエ | -1, -1 | 1, 2 |
グラフ